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長いようで、短かったような学生生活の終わり。
迎えた、卒業式の翌日。

夜明け前の薄暗闇中、したためた書き置きをテーブルに残す。

ゆっくりと、部屋の角のベットへと歩く。
そして、そっと手を伸ばし、ベットの中で眠る、リュカの髪を優しく撫でる。
驚いたかの様に、リュカは少しだけ身をよじらせ、けれど、すぐに気持ちよさそうな寝息を立てる。
ずっと、こうしていたかった。
ずっと、愛おしい寝顔を眺めていたかった。
ずっと、かけがえの無い、愛した女の傍で、離れずに居たかった。

けど、それでも。

このままで、居られるわけがなかった。

「・・ごめんな。おれ、ティースのにーちゃんだから・・さ。」

未練を断ち切る様に、白い頬をそっと撫でると、足音を忍ばせ、ヘイズは部屋を出た。
背後の扉に背を預け、溜息の様に大きく息を吐く。
今直ぐ、この扉を開き、中に戻りたい衝動が込み上げてくる。
唇をかみ締め、拳を握り、その狂おしい衝動に耐える。
出会ってから、今日までの幸せな日々が、浮かんでは消える。
体が震えだす程奥歯を強くかみ締め、思い出を振り払う。

間違っているのは、よく解っている

けど、だからと言って。
このまま、ティースが死ぬのが解っていて、それに目を瞑れる筈がなかった。
ティースは、あくまで、義理の弟かもしれない。
けれど、自分にとっては、もう本当の弟と同じ存在なのだ。
その大切な家族を見殺しにして、リュカと幸せになれるとは思えなかった。
そんな自分で、リュカを幸せにできると、そう考えることができなかった。

「・・やっと、盗人から更正できたと思ったら、今度は、暗殺者のお訪ね者・・か。」

卒業式の後、シャルロットから、彼らの村の風習について聞かされた。
話を聞き終わった瞬間から、ヘイズは、己が成すべきことを決めていた。
即ち、村の風習の最権力者である、彼の祖父を暗殺すると。

その人物さえ消してしまえば、後は、混乱は多々あるだろうが、恐らく、改革派が村を掌握するだろう。

まともなやり方と思考でないのは、はっきりと自覚している。
どうやら、自分は犯罪者と言う生き方から、足を洗うことはできない星の元らしい。
その事に苦笑を浮かべると、それが合図であったかの様に、ヘイズは扉から背を離し、薄闇の廊下をそっと歩き出す。
そして、宿の扉を開いて外に出ると、丁度、昇り始めた朝日が視界を染め始めていた。
その眩しさに目を細め、朝焼けに染まり行く街を暫し眺める。

「・・大丈夫だ、ティース。にーちゃんが、絶対助けてやるから。」

事の成否に関わらず、自分は追われる身となって、もう皆に会うことは出来ないだろう。
けれど、他にティースを助け、自分の愛するもの達を巻き込まない方法等、思いつかなかった。

”何故、自分だけで背負い込もうとするんですか!”

かつて、リュカにかけられた言葉が、脳裏をよぎる。
何故だろうな?心の中で、自問して、けれど、直ぐにそれを振り払った。

答えは、事を成した後、ゆっくり考えればいい。
追われ続ける人生の間でも、それを考える時間くらいはあるだろう。
ただ、それでも敢えて、今結論着けるなら、多分、自分は我侭なのだ。
自分を想ってくれる人達が、嘆き悲しむのが解っているのに、こんな選択しか選べないのは、そう言うことなのだろう。


一先ずの、その結論着けを合図に、ティースの故郷の村に向け、朝焼けの街の中へと、ヘイズは一歩足を踏み出した。

END




はい、ティースくんBAD ENDリンクの、ヘイズ即興SSです。
いくつになっても、こーいう生き方、考えかしかできない、バカヤロウです、ヘイズは。(滅
まったく、リュカさんに苦労かけっぱなしですね。このお馬鹿は。

ちなみに、この後、宿屋の窓から、リュカさんに怖い目で見下ろされつつ、声をかけられる→ピシリと固まると言うオチが待ってます。(笑

流石、リュカさん。ヘイズの思考なんてお見通しですね!
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