スパの足湯で温水をパシャパシャと素足で叩きながら、彼女は珍しく考え込んでいた。
上手く言えないし、よく解らない。
でも、何か違う。
話しかければ、答えてくれる、向こうからも話しかけてくれる。
でもでも、何か違う。
目の前に居たのは確かに彼で、耳はピコピコしていたし、頭も撫でてくれた。
でもでもでも、何か違う。
じゃあ、何が違う?
何が違うと思う?
考える。考える。
思考がグルグル、グルグル回る。
けれど、やっぱり同じ答えの堂々巡り。
モヤモヤした感覚だけが、自分の中に一杯で。
それでも、がんばって考えてみる。
思考はグルグル、グルグル回って、けれど、やっぱり解らなくて・・・・?
「・・・オーウ?」
やっぱり、全然解らないけれど?
「・・・マジ狩ルフレンドリー、禁止デース??」
解らないけれど?解らないけれど??
「・・・ノット、ハンティング???」
一瞬、何か閃いて??
「・・・オーウ????」
小首を傾げて、疑問符を浮かべてみると???
「暖ッカ、ヌクヌーク!」
・・・思考投げたよ、この子。
近くに居て、一緒に話しているのに、離れた場所に居るような感覚。
近寄っても近寄っても、同じだけ距離を開けられている様な思い。
もっと彼の近くに行きたいのに、見えない壁に阻まれている様なもどかしさ。
考えても理解できなかったけれど、本能や直感が感じたそれは、距離感。
それを感覚で感じ取れても、思考で理解できなかった、彼女の違和感の正体。
考えても解らない。だったら・・
「チャージング、アーンドッ、ブレイクスルー!」
彼が大好きで、彼も大好きだと言ってくれた。
なら理解できないなりに、開いている距離を全力で、目一杯、彼に近づくだけ。
距離を隔てる見えない壁を、全力で突破するだけ。
結局、何時も通りの結論に落ち着くと、彼女はスパを後にした。
そして、スパから寮に戻る途中、彼女の隣を一組のカップルが通り過ぎた。
女子生徒が嬉しそうに、男子生徒の腕を胸に抱いて寄り添っている。
”な、なあ?引っ付き過ぎじゃないか?嬉しいんだけど、ちょっと恥ずかしいっていうか・・”
”ふふ、ダメよ?もう離してなんかあげないんだからね?”
すれ違う瞬間、そんな幸せそうな二人の会話が彼女の耳に届く。
立ち止まって振り返り、歩き去るカップルの背をじーっと見詰める。
不意に思い出す、師匠の言葉。
『お前ぇの大事なものなら、肌身離さず、ちゃんと確保しとけ。』
そして、彼女の頭の中で、独特のメロディーが流れだす。
”ポクポクポクポク・・・チーン!”
「OK!It captures it!」
何を思いついたのか、そう口してサムスアップ。
そして満面の笑顔を浮かべると、彼女は寮へと走り出す。
晴れやかな顔を見る限り、取り合えず、次に彼に合った時にどうするかは決まったようだ。
END
はい、どこかのボケボケ娘のSSです。
犠牲者は誰か、あえて申しません。ええ。バレバレだろうと申しませんとも!(笑
さて本文中、セリフに英訳和音文と、完全に英文字文の部分がありますが、これは和音の時は、コモン語発音(訛り発音)、英文字の時は、母国発音のイメージです。
エセアメリカ人って、結構難しいッ!
補足すると、現状での感情は、既に恋愛感情です。
ただ、天然ボケボケなので、友情と愛情の区別がまだできてません。
なので認識としては、「誰より一番、フレンドリーな人」と言う認識になってます。
果たして、卒業までにきちんと友情と恋愛感情の認識区分はできるのか、凄く疑問ですが!
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